蜜月クライシス!【BL】
「咲都ぉ、お待たせっ、って──あれ?」
勢い良く部屋の戸に手を掛けた晶は、間の抜けた声を出した。
「何やってんだよ。早く開けろって」
「鍵、開いてないんだけど」
「あ?」
「あ、じゃなくて」
時刻はもうそろそろ19時になる。
そんな時間に咲都がいないのは珍しい。
咲都はどこだ、と何度も繰り返す晶を無視して彰那が戸を開けると、そこには咲都のスニーカーが鎮座していた。
「咲都が帰って来るまで待たせて貰うからな」
「ちょっと待て」
靴を見詰める彰那を押し退けて晶が部屋に入ろうとすると、彰那に止められた。
「何だよ。別に高槻の部屋に入れろとは言ってないだろ」
「静かにしろ」
抗議の声を上げる晶を制して、彰那は足音を立てないようにして部屋に入っていく。
その様子にただならぬものを察したのか、晶も彼に倣って足音を忍ばせた。