クールなキミとの恋模様


「わっ」


立ち止まっている誰かの背中に、思いっきりぶつかってしまった。


振り返ったその人は、なんと……。


げっ!


桐谷っ!


「ごご、ごめんっ!」


後ろを振り返って怪訝に眉を寄せる桐谷に向かって、素直に謝罪する。


だけど、なんだか睨まれてる……?


怖いんですけどー!


前をよく見ていなかったあたしが悪いのは確かだけど、通路の真ん中で立ち止まっているのもどうなのかな。


「えー、やだ。なに桐谷くんに当たってんの?」


「気にかけてもらえるとでも思ってんの?っていうか、わざと?」


ただぶつかっただけなのに、そこまで言われるとは。


女子全員が桐谷に興味があると思わないでほしい。


取り巻きの女子たちに睨まれ、まさに針のむしろ。


桐谷は無言の重圧をかけてくる。


眉ひとつ動かさない無表情は、さすがに怖い。


疑われていても嫌だし、早く切り抜けなきゃ。


「わざとじゃないんで」


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