方言男子に恋をした
かっこいい男性に話しかけられているということと、聞きなれない言い回しに私は内心ドキドキだった。

通ってはるって…。
どこかの方言だったような気がする。
アクセントもどこかこっちとは違うし…。


「そうなんですか。溶け込んではる感じやったんでつい」


そう言ってにこりと微笑んだ。
…その微笑みの裏に黒い何かがあるように見えたのは私だけでしょうか。


「あの…一つ聞いてもいいですか?」

「何でしょう?」

「出身はどちらですか?」


おずおずと聞くと男性は相変わらずにこりと微笑んだまま、


「京都です」


と言った。

京都ね!そう言われたら分かるかも。
京都の~しはるって有名ですもんね!


「そうなんですか!?お仕事かなんかで東京に?」

「仕事で」



京都の人に会う機会がなかった私は興奮して、さっきの発言の裏に見えた黒い何かをすっかり忘れていた。
それだけでなく、その男性に勧められるがまま知らない飲み物を飲んでしまった。

いつも酔って記憶をなくすほど飲まない私。
しかしこの時ばかりは記憶というより意識をなくしてしまった。
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