方言男子に恋をした
すると佐久間課長は溜め息をついた。


「何ですか」


ジッと睨みながら言うと、佐久間課長は持っていたビニール袋を私のデスクに置いた。

な、何だ…?


「適当に選んだから、嫌いなんあったら置いといて」


無言でビニール袋を見つめる私に、佐久間課長はサラッと言って隣のデスクに腰を下ろした。

え、何でそこに座るのよ。
自分のデスクに戻ったらいいじゃない!

…と、そんなことも言えず。

結局、


「課長帰ったのでは?」


としか言えなかった。

しかも緊張のせいで、声が可愛げのないものになった。


「外に出てたんやけど、さっき戻ってきたら誰かさんが黙々と画面に向き合ってはったから」


誰かさんという言葉で佐久間課長がこちらを向き、思わず視線を下にした。

しかし誰かさんって…私しかいませんよね。


「何も食べてへん思って買ってきたわけ」

「は、はあ…それはありがとうございます」


変わらない声のトーンだが、心中は決して穏やかではない。
< 35 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop