方言男子に恋をした
かと思いきや。


「松田さん」


ニッコリ不気味な微笑みで私の名前を呼んだかと思えば、


「今月の対談相手は変更になりましたから」


とだけ言い、颯爽と部屋を出て行った。

…出て行った?


「…ってちょ、課長待ってくださいよ!」


変更という事実だけを言って出て行くってどうなのよ⁉︎
せめて、誰に変更になったか言ってほしいわ!
大事なところなのに抜かさないでよ!

私は佐久間を追いかけるため、ポカーンとした顔の後輩を残して部屋を出た。



追いついたのは広報部フロアに入る少し手前。
少し先では、そんなに大きくない話し声とキーボードを打つ音がする。


「課長っ!」

「あれ、松田さん?どうかしましたか?」

「どうもこうも変更になったならば、対談相手も教えていただきたいのですが」


そう興奮する気持ちを必死に抑えて言えば。


「ああ、そうですね…いや、松田さんのことですから、もう知っているのかと思ってましたよ」


涼しい顔をされて言われた。

前言撤回。
…この男に少しでも恋心もどきを抱いたのは嘘だわ。

あれは恋からくるドキドキなんかじゃない。
あれだ、ただ緊張しただけだ。

私はイケメンに免疫ないし、そもそも男性に免疫があると自信を持って言えない。

そう考えると納得出来る。
うん、そうよ…佐久間相手に恋心だなんてありえない。
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