方言男子に恋をした
どこか人をバカにしたような言い方、余裕かつ涼しい顔、本心が分からない黒い微笑み。

かつ一夜を共にした男。(ここは重要である)

こんな男を好きになるわけがない。


「松田さん?」

「…申し訳ありません、何もありません」


とにかく今は仕事よ。
私情を挟むわけにはいかない。


「対談相手はどなたですか?」

「今野常務です」


何ですと?


「…冗談ですか?」

「スケジュールを合わせたいと秘書の方から連絡がありましたからお願いしますね」


ほう…完全スルーですか。

じーっと佐久間を見ていると、怪訝そうな顔を見せた。
しかしその時「お疲れ様です」と社外課メンバーが通った。


「お疲れ様です」


一瞬にして顔が変わった。
あの、怪訝そうな顔はどこへ?というくらい綺麗なスマイルを見せた。

通ったのは女性社員で、顔を赤く染め去って行った。

…何なんだこの男は。


「あ、もう一つお知らせが」

「何ですか」


嫌な予感しかない。


「今日の昼休み資料室に来てください」

「は?」

「ではまた」

「は⁉」


佐久間は言うだけ言ってさっさと広報部フロアに入って行ってしまった。

…だから大事なところが抜けているんだって。
理由ぐらい教えなさいよ。

そう文句を言いつつも、昼休みの予定に資料室に行くという用事が追加されたのは言うまでもない。
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