方言男子に恋をした
ガチャという音がして、


「遅れてすいません」


といつもの佐久間が入ってきた。


「課長遅いですよ!」

「部長の呼び出しが予想以上に伸びてしまったんですよ」

そ、それなら仕方がないか…。
部長のお呼び出しだし、何より仕事なのだから。
それでも腹を立てるほど、私はバカではない。


「で、用件は何でしょう」


そう聞くと、佐久間は薄暗い部屋でも分かるくらい意地悪く微笑み茶封筒を差し出した。
私は怪訝そうな表情を浮かべながら受け取った。


「…これは?」

「中身を見れば分かります」


そんなに分厚くない茶封筒だった。

何だろう…。

茶封筒を開け、中身を出してみる。
中から出てくるものを誰が予想出来ただろうか。

なんせ中身は、


「えっ、お金?」


諭吉さんが一人と一葉さんが一人の、計一万五千円。

…どこかで見た組み合わせだ。
ああ、思い出したくなさ過ぎて頭が痛い気がする。


「分かっていただけましたか?」

「…」

「分かりませんか、それは残念ですね。あれほど盛り上がった夜を忘れてしまいましたか」

「わ、分かります覚えてますから!」


焦って答えれば、佐久間は「それは良かったです」と微笑んだ。

何が良かったです、だ!
よく一夜を共にした相手に、何の気まずさもなく過ごしていられるわ‼︎

…いや、私が慣れなさすぎなんだろうか。そういうのが普通なのか?

ともかく。
< 49 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop