方言男子に恋をした
「あの、返してもらわなくて結構です」

どういった経緯で、理由で泊まったにしろ宿泊代を出すのは当たり前ではないか。

あの日からずっとそう思っていたので、お金は茶封筒に戻し佐久間に差し出した。


「受け取って下さい」

「丁重にお断りします」

「な、何でですか!」


突き返してみても、佐久間はスルー。
受け取るのを断られた茶封筒が、虚しく私に握られた。

そして佐久間はスーツからスマホを取り出し、何かしていると思えばスッと私に見せてきた。


「分かりますよね?」


嫌味な発言をプラスして。

これで分からなかったらお前はバカだと言わんばかりだ。


何故こんな男に少しでも恋もどきの気持ちを抱いたのだろう。

さっきよりも真剣に考えながら、スマホの画面を覗いた。


「…つまり、宿泊代はただだからお金はいらないと」

「その通りです」


見せてもらったのは、佐久間の友達と思われる人物から送られてきたメール。

内容は、私たちが泊まったあのホテルの招待券をもらったが、行く予定がないということ。
そしてたまたま東京に転勤する佐久間に、転勤祝いとしてあげるということだった。
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