方言男子に恋をした
8.余計なことを言わないで下さい
「あ、松田さん」
全速力で走って社長室などが並ぶフロアの小さな一室に入れば、綺麗な笑顔を浮かべた常務秘書の姿があった。
やっぱり間に合わなかった…。
「遅れてしまってすいません」
「いえ、私もついさっきここへ来たばっかりですから」
そう言って、常務秘書である清水さんはニコリと微笑んだ。
うーん…相変わらず綺麗な方だわ…。
私より年下のはずなのに、大人の女性といった雰囲気がある。(私の場合は言うまでもない)
仕事も早く、あの無理難題を笑顔で言う常務の秘書を誰よりも長く務めている。
加えて、社外にエリートでイケメンな恋人がいるらしく。
なんかもう、理想の女性というかなんというか。
純粋にすごいなと思う。
「早速本題に入ってもよろしいですか?」
「あ、そうですね」
清水さんの声に、急いで広報フロアから頂いてきた対談に関する資料を出して清水さんに渡した。
「ん?質問コーナーですか?」
「そうです。今回は社員の声を参考にしながら、作っていこうと思いまして」
対談の他にも今までとは違う、社員の声を参考にして作る企画が多い。
その分、私たち社内課メンバーの負担も多くなっていくが。
…仕方ない。
いい社内報を作るため、そして佐久間をぎゃふんと言わすために頑張るしかない!