大好きな君へ。
「去年なら拝見出来たのよね。次の御開帳が待ち遠しいね」
優香は名残惜しそうだった。
案内書によると此処は花の寺だと言われている。
だからだろうか、石の柵の近くに小さな白い花が沢山咲いていた。
葉はヤブランに似ている気がした。
「あの花は何て言うのですか?」
納経所で聞いてみた。
「ヤブランですよ」
そう教えてくれたのに、疑っていた僕だった。
細くて長い葉に紫の粒々状の花がヤブランだ。
似ても似つかない、と思って首を傾げたのだ。
池の周りには夏椿も咲いていた。
その近くに蛙の置物を見つけた。
「あれっ、護国観音様の下にあったのに似てるね」
優香が嬉しそうに言った。
「本当にそっくりだ。巡礼者が無事に帰れるように見守ってくれているのかも知れないね」
「そうよね。あの護国観音の道も、此処への道も険しかったからね」
「昨日間違えたしね」
照れ隠しに笑ったら、隣で優香も微笑んでくれていた。
「さあ、又頑張るか?」
名残惜しそうに蛙の置物を見ている優香に向かって声を掛ける。
「これから長丁場だものね。長居は禁物か?」
優香はそう言いながら、屈んでいた体を起こした。
又迷子になってはと思って、白久駅まで戻ることにした。
もっともこのお寺だけはそうしないとならなそうだったけど……
「お墓参りの時に同じ道を通ると縁起が悪いって聞いたけど仕方ないね」
それは以前誰かに聞いたことがあった。
「だったら此処だけ違う道を行こうか?」
僕はそう言いながら、駐車場へと向かう階段を下りて行った。
又カーブと急勾配の坂道を行く。
途中で何台かとすれちがった。
少しずつ車の数が増えて来ていると実感した。
実は山梨から雁坂トンネルを越えて巡礼に来る場合、一番先に寄る寺らしいのだ。
だから比較的朝早くからでも参拝者は多いようだ。
「奥の院もあるみたいだね」
優香の開いた案内書の地図には、三十番奥の院洞窟観音菩薩と記されていた。
「今日はこれから大変な行程になるから行くのは止めておこう」
さも得意そうき僕は言った。
「私もさっき長丁場になるって言ったしね」
優香はその観音菩薩の安置してあるだろう方向に向かって一礼をした。
(僕達の行く道をどうかお見守りください)
僕も優香に追々して頭を下げた。
優香は名残惜しそうだった。
案内書によると此処は花の寺だと言われている。
だからだろうか、石の柵の近くに小さな白い花が沢山咲いていた。
葉はヤブランに似ている気がした。
「あの花は何て言うのですか?」
納経所で聞いてみた。
「ヤブランですよ」
そう教えてくれたのに、疑っていた僕だった。
細くて長い葉に紫の粒々状の花がヤブランだ。
似ても似つかない、と思って首を傾げたのだ。
池の周りには夏椿も咲いていた。
その近くに蛙の置物を見つけた。
「あれっ、護国観音様の下にあったのに似てるね」
優香が嬉しそうに言った。
「本当にそっくりだ。巡礼者が無事に帰れるように見守ってくれているのかも知れないね」
「そうよね。あの護国観音の道も、此処への道も険しかったからね」
「昨日間違えたしね」
照れ隠しに笑ったら、隣で優香も微笑んでくれていた。
「さあ、又頑張るか?」
名残惜しそうに蛙の置物を見ている優香に向かって声を掛ける。
「これから長丁場だものね。長居は禁物か?」
優香はそう言いながら、屈んでいた体を起こした。
又迷子になってはと思って、白久駅まで戻ることにした。
もっともこのお寺だけはそうしないとならなそうだったけど……
「お墓参りの時に同じ道を通ると縁起が悪いって聞いたけど仕方ないね」
それは以前誰かに聞いたことがあった。
「だったら此処だけ違う道を行こうか?」
僕はそう言いながら、駐車場へと向かう階段を下りて行った。
又カーブと急勾配の坂道を行く。
途中で何台かとすれちがった。
少しずつ車の数が増えて来ていると実感した。
実は山梨から雁坂トンネルを越えて巡礼に来る場合、一番先に寄る寺らしいのだ。
だから比較的朝早くからでも参拝者は多いようだ。
「奥の院もあるみたいだね」
優香の開いた案内書の地図には、三十番奥の院洞窟観音菩薩と記されていた。
「今日はこれから大変な行程になるから行くのは止めておこう」
さも得意そうき僕は言った。
「私もさっき長丁場になるって言ったしね」
優香はその観音菩薩の安置してあるだろう方向に向かって一礼をした。
(僕達の行く道をどうかお見守りください)
僕も優香に追々して頭を下げた。