大好きな君へ。
 「そうだよね。妊娠する度に産休や育児休暇を取っていたら、後ろめたくもなるからな」


「少子化を食い止めるには私達が産まなくてはならないって解っているけど、職場に迷惑掛けたくないんだ」


「だから双子か……」


「ううん、本当は三つ子が欲しい」


「み、三つ子!?」
僕は相当驚いてしまったのだろう。
自分でも声がひっくり返したことが解った。


「優香……。優香の気持ちは解るけど、流石にそれは無理だろう」


「隼、解ってくれるの?」


「あのお地蔵様の傍に三人いたから……、だろ?」


「うん。もし普通の出産だったら、セーブしなくちゃでしょ。だから一度に沢山欲しくなったの」


「やっぱりそっちか?」


「そっちかって、どっち?」


「うーん、優香の意地悪」
僕はわざと拗ねた真似をした。


「それを僕に言わせる気なんだね?」


「違うわ。そりゃ、確かにセーブは……」

優香は急に押し黙った。
見ると優香は、真っ赤になって俯いていた。




 「隼の言う通り、お地蔵様の傍に三人いたでしょ。一人は抱かれて……初めく解らなかったの。だから下の二人を助けてようとしたの」

優香は咄嗟に発言を変えて逃げていた。
僕はこれ以上優香をからかってはいけないと判断し、結夏の言葉に追々した。


「そうか。だから双子だって言ったのか?」


「でも今、急に思ったの。出来れば三つ子がいいなって」


「でももし三つ子だったら、優香は育児に追われて、仕事出来なくなるんじゃないのかな? もしそうなれば僕も出来る限り応援するけど……」

自分でも不条理なことを言っていると解ってる。
優香の思い通りにしてやりたいのは山々だけどね。




 「結夏さんと隼人君。後一人は……? ねえ隼、誰か他に救ってあげたい人居ない?」


「居ないよ」

即答した。
優香は隼人の他にも僕に水子が居てほしいのだろうか?




 「優香、僕にもう一人水子が居ても平気なの?」


「それはイヤだ」


「だったら三つ子だなんて言わないの。隼人ばかりではなく、結夏も救ってやりたいと思う気持ちだけで充分だから……」




 ふいに観音寺の近くにあった水子地蔵院が脳裏によみがえった。
幾千万の水子の像と寄り添うあの赤い風車。
それは悲しそうに回っていた。


その時、まだ優香に誤っていない事実を思い出した。




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