大好きな君へ。
 私は早速バイクに股った。


「えっ、本当に行くの? 家族の人が心配しない?」


「まだ早いから大丈夫」

私の言葉を受けて、バイクは再び走り始めた。


(何処へ連れていってくれるの? 本当に隼お兄ちゃんの部屋? だったら嬉しいけど、恥ずかしいな)

私のハートはドキドキものだった。


足の置き場だけあるバイクの後部座席は正直言って物凄く怖い。


それでももう一度乗せてねて願っていたから物凄く嬉しかったのだ。




 着いた場所は良く行くスーパーの隣にあるマンションだった。


「えっ!? 此処に住んでいたの?」


「うん。ほらこのスーパーの前に宝くじ売り場があるだろう? 彼処で叔父さんが当ててね」


「えっ、買ってもらったの?」


「いや、貸してもらってる。家賃は無いんだ。でも、修繕費とかで少し出しているけどね」


「そう言えばマンションってそれがあったのね。もしかしたらあのアパートの家賃より高かったりして……」


「実はそうなんだ。あのオンボロアパートより高いかも知れないな」


「幾ら安いと言っても考え物ですね」


「いやあのアパートに比べたら月とスッポンかな。ゆうかは……」

隼はそう言いながら又固まった。


「ごめん優香。部屋片付けてなかったよ。今日はスーパーのアイスクリームでいい?」

その言葉に頷いた。

私だっていきなり部屋は面食らう。
それでも嬉しくてつい付いてきてしまったのだ。


「私もその方が嬉しい」

私はそう言いながらそっと隼の手を取った。




 「美味しい。久し振りに此処のアイスクリーム食べたわ」

スーパーの正面入り口の横にあるアイスクリームショップ。
私は此処のアイスクリームが大好きだった。
でも、私には高級過ぎたのだ。

だから年に数回食べられれば良い方だったのだ。


「そんなに喜んでもらえて嬉しいな」


「だって、短大生には高嶺の花だったのよ」

隣には私の憧れの隼がいる。
私はこの時本当に幸せだった。




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