大好きな君へ。
 出来上がった料理がテーブルの上に並ぶ。
それはフレンチトーストとグリーンサラダだった。


「このサラダ、何を入れたの? 白くてふわふわして、食感が面白い」


「カッテージチーズです。フレンチトーストに使用した牛乳の余りで作りました」


「僕、フレンチトーストって初めて食べたよ。柔らかくて美味しいね」


「ソフトフランスパンってのがあったの。大きさも手頃だしこれに決めたけど……」

優香はそのまま黙ってしまった。


「どうしたの?」

僕の声で慌てたのか、優香は突然立ち上がり頭を下げた。


「ごめんなさい。大学でお昼はパンになることが多いって聞いて、何か美味しい物を作るつもりだったのに……。結局私が選んだ食材はパンだった……」


「ぷっ!!」

僕は思わず吹き出してしまった。


「だってぇ」


「だってぇ、何?」


「オヤツもパンなの」


「ぷっ!!」

又吹き出した。
失礼だと思ったが、僕は可笑しくて堪らなくなっていた。


「あはははは……」
僕は堪らずに笑い出してしまったのだった。




 「スーパーに入る前までは違う料理しようとしていたのに、気付いたら……」

どうやら優香は舞い上がっていたようだ。
いや、そうだったら嬉しいと思っていただけだ。
それは優香が僕に行為を寄せてくれている証拠だと思ったからだった。


「今の優香、物凄く可愛いな」
その言葉に僕は一瞬戸惑った。


(言うにことかいて、何を言い出すんだ)

僕はおそるおそる優香を見つめた。

でも、僕の言葉に優香は固まっていた。


「ありがとう優香」

僕は優香のオデコにキスをした。

優香は恥ずかしそうに俯いた。




 「あっ、茹で玉子忘れていた」

優香は慌ててコンロに置いてあった鍋に走った。


「少し沸騰させたら電源を切るの。温まったお湯で自然に茹で玉子になるのだけど……」


……コンコン。

小気味良く優香が玉子の殻を剥く。


「これで少しはバランス良くなったかな?」

優香は笑った。




 結夏との思い出が刻まれたソファーベッドの上でイチャ付く訳にはいかない。
それに優香は僕を『王子様』だと言った。だから余計に紳士的な態度を取るしかなかったのだ。




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