終わらない七月九日
「幸せだね。」

「まぁな。」

大ちゃんもナツも空を見上げていた。私は目の前にある光景が信じられないでいた。ナツが生きている…。すると突然男の声が響き渡った。

「お~い!君たちもここに来たのか~い?」

私たちは声のする方を向くと、男と小さな子どもが乗ったボートが、急いでこっちへやってくるのが分かった。ボート乗り場の方向から来たみたいだ。

「飯沼かよ…。」

その男の姿を捉えたナツがめんどくさそうに呟いた。飯沼は大ちゃんと同じクラスで、ナツとは接点がないのだが、何故かナツに付きまとっては突っ掛かってくる変わった男だ。

「やぁ、元気かい?」

飯沼は息を切らしながら私たちの近くまでやってきた。ボートには五、六歳と思われる男の子が、公園で買ったと思われる風船を左手に持ちながら、不安そうにこちらを見ていた。
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