終わらない七月九日
「君たちがボートに乗ってなかったら、僕と彰太も乗ってなかったのに!!」

「そんなことより…」

「彰太は泳げなかったんだ!!」

大ちゃんが湖の中から飯沼に話し掛けようとしたが、飯沼はすぐに話を遮った。
ボートに手をかけたまま、悲しそうな顔をする大ちゃん。

「可哀想な彰太…。風船が飛んでいっちゃったのを掴もうとしたんだよね…。」

横たわっている彰太を見つめ、目と鼻から水を垂らす飯沼。そしてその目はナツに向けられた。

「彰太が死んだら僕は絶対君を許さない!!」

飯沼はナツを指さし、口から唾を撒き散らしながら言った。私はナツを見た。ナツは頭を抱え下を向いていた。

「なんで…。」

私は思わず呟いた。何故こんなことが…。待っていられない。救急車はいつくるのだろうか。私は自分の腕時計を見てみた。そのとき腕時計の竜頭が飛び出ていることに気が付いた。
あれ?私は何も考えず竜頭を押した。
その瞬間、体が何かに吸い込まれる様な感覚がした。…そうだ!これはタクシーの中で経験した感覚だ!!私はそのまま何かに引きずりこまれていった。
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