終わらない七月九日
キーンコーンカーンコーン。

「はっ!!」

学校のチャイムの音で、私は勢いよく起きた。
あれ?…まただ!また戻ったんだ!!何故?一体何が起きているの?!
先生の声に後ろからのテスト用紙、そして…

「光、さっさと帰ろうぜ。」

やっぱりだ。

「ナツ…。」

私は泣き出しそうな顔になってしまったのだと思う。

「光どうしたんだよ?!」

ナツが焦って私の顔を見た。

「分からないよ…。」

頭が混乱する。でもこの後の展開は分かる。

「ようやく二学期最後のテスト終わったね~。」

ほら、大ちゃんだ。

「あれ?何かあったの?」

私とナツの姿を見て、大ちゃんも気が付いたようだ。

「いや…光がなんか…。」

ナツもこの状況がよく分かっていない為、しどろもどろ言った。

「光大丈夫?」

大ちゃんが見つめてきた。

「…うん。平気だよ。」

私は笑ってみせた。この短時間だが、私は少しの可能性を考えてみた。

「そっか!じゃあ気分転換に、この後どっか行こうっか?」

大ちゃんはニコニコしながら聞いてきた。

「私はちょっと教室でやることあるから、先に行ってても良いよ?」

私はその可能性について、一人で考えたかった。

「そっか~。じゃあ校庭で待ってようか。それで久しぶりにキャッチボールでもしようよ、ナツ!」

大ちゃんは目をキラキラさせながらナツに言った。

「んーそうするか。」

「やった!また後でね、光!グローブ取ってくるぞ~!」

そう言うと大ちゃんは教室から出ていった。

「光…。」

大ちゃんが出ていったのを見計らって、ナツが話しかけてきた。

「うん?」

「何かあったらすぐ俺に言えよ。」

ナツの顔が近づいてきた。その目は真剣で、私はドキッとしてしまった。ナツがこんなにも心配してくれている…。

「…ありがとう。でももう大丈夫だよ。ちょっとしたら校庭行くね?」

私は微笑んだ。ナツの優しさが嬉しい。でも何度も時間が巻き戻って困ってるんです、だなんて言えない。

「なら良いけど。じゃあ校庭で待ってるわ。」

それだけ言うとナツは行ってしまった。その後ろ姿に何だか寂しさを覚えた。
私は息を吐く。そして可能性について考えた。



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