終わらない七月九日
「ん?」
さっきまでの表情はどこへ行ったのか、私の方を振り向いたナツの顔は微笑んでいて、いつもと変わらなかった。
ボサボサの黒い髪に透き通る様な白い肌、笑うとき左の口角だけを上げる癖、昔から見慣れているはずなのにドキッとしてしまう自分がいた。さっきの表情は何だったのだろう。
「あのさ」
大ちゃんが思い出したように話し出した。
「 俺考えてたんだけど、光の家に帰る途中の大通り沿いにケーキ屋あるよね?あそこでケーキ買っていくのも良いんじゃないかな?」
「大ちゃん良いね!私も甘いもの食べたい!!」
「興味ねーわ。」
私と反対でナツはぶっきらぼうに言い放った。私にはそれが、いつもより口調がきついように思えた。
「じゃあとりあえずケーキを見てみよう!あとは…。」
大ちゃんはそのまま話続けた。けど私の耳には入ってこない。理由は分からないが、少しの違和感を感じ考えていた。
「光っ!光っ!!」