終わらない七月九日
大ちゃんの声に私はびっくりした。

「ボーとしてどうしたの?もうそこだよ?」

大ちゃんは建物を指差す。気づけばもうケーキ屋の前まで来ていた。

「わぁっ!美味しそう!!」

私は急ぎ足で店へ入った。その店の扉は引き戸を引いて中へ入るタイプで、扉を抜けると目の前にショーケースが並べてあった。
私に続いて大ちゃんとナツも入ってきた。
店は大人がちょうど横に四人入れるくらいの小さめの店舗だ。店の中に店員はいなかった。

「決めるなら早く決めろよ。」

ナツは自分がはめてる腕時計見ながらけだるそうにしていた。

「そんなこと言ってないでナツもちゃんと見るんだよ!」

そう言いながらちゃんは端の方でケーキを眺めていた。

そんな二人のやり取りを横目で見ながら、私はショーケースの上にちょこんと置かれている、小さなデジタル時計に気づいた。
時刻は十二時四十九分だった。
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