終わらない七月九日
「このケーキ、光みたいだな。」

突然ナツが私の耳元で囁いた。ナツが指差したケーキを見てみると、熊の顔がクリームで描かれたものだった。また私のことをおちょくってるのかと思って、横にいるナツを睨んだ。

「光…。」

ナツは私の名を呼んだ。その口調はいつもと違ってとても優しかった。

私はナツに何?と問い掛けようとした瞬間、扉の向こうから女性が叫ぶ声がした。

「…!」

驚いて外を見ると、ちょうど車がこちらへ突っ込んでくるところだった。



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