七色マーブル【短編集】
私はこの山に囲まれた地で、ほぼ自給自足の陶芸家として生活し始めた。とか、山々のに囲まれている為、外界から影響を受けずに済むこの地域は有機栽培米の水田が広がっていて、そこから採れる土は大変良質でキメが細かく陶芸に適している。だとか、夕日に照らされた棚田の水田は金波銀波に煌めいてあまりも美しく、夢中でカメラのシャッターを切った。


なんて事を長々と綴って送るのだ。


万年筆を、お揃いで買ったガラスの筆置きにそっと横たえる。


ふと窓の外を覗くと、縦にもくもくと伸びている積乱雲が見えた。

こりゃーもうすぐ一雨が降るかな?


便箋の上で踊ったインクが渇いた事を確認すると、すぐさま封筒に閉まい外へ出る。


名前が「カブトムシ」の意味を持つクリーム色の愛車にエンジンをかけ、郵便局へと向かった。


< 15 / 71 >

この作品をシェア

pagetop