七色マーブル【短編集】
【第２の悩み事】


「あの…僕、同時に７人で１人の女性を好きになってしまったんです！」


黒髪の青年は、指をわなわなと震わせながら眼鏡のフレームを掴み、鼻息を荒くしている。


「…君が彼女を射止める確率は数字にして１４・２％程か…やはり若さとはエネルギッシュ…」


教授はやはり目を丸くしてあご髭を触る。もう一方の手はカタカタとキーボードを打つ様な動きをする。これは教授が暗算を行う時に見せる仕草である。


「計算上の数字なんてどうでもいいことです！」


青年はバン、と両手でテーブルを叩きつけて立ち上がった。


「まぁまぁ、落ち着きなさい。ほら…まずは座って。」

「…すいません。つい興奮して…」


青年は申し訳なさそうにしながらソファーに腰掛け、テーブルに出されたコーヒーを１口すすった。


「自分でも大変な事だってわかっているつもりです。でも問題なのは７人全員が彼女を本当に愛しているって事なんです。誰１人として身を引く気はありません。教授、僕は一体どうすればいいのでしょう…？」


青年の眼差しは１点の曇りもなく、真剣そのものである。


「ほう、それは大変だね。とりあえず詳しく話してみなさい…」


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