七色マーブル【短編集】
僕は柵にうつぶせでもたれかかり、預けた両腕をぶらぶらさせながら沼を眺めた。


「なんか生き物とかいないのかなぁ?」


目を凝らすが明度は低く、水面にいるトンボやアメンボを確認できただけで、水中の様子はちっとも分からなかった。


「ちぇっ、やっぱり小川の方が良かったかなー」


そんな事を思っていると、水面にぽた、と滴が落ちたのが見えた。


「ん?」


僕が答えを見つける間もなく、次から次ぎへとひっきりなしに同じ現象が起こる。


「ー雨か」


上を見上げると、やはり色とりどりのモザイクの隙間から細かな雨粒が降り注ぐのが見え、その雨粒は降下の途中に何度も葉に身を滑らせては、細く長い雨糸へと姿を変え、水面に垂らし込んでいた。


雨糸が水面へ着陸した際に出来た幾つもの波紋が、沼中であしあいへしあい、愛嬌たっぷりに「おしくらまんじゅう」している。


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