七色マーブル【短編集】
確かに…甘さ、しょっぱさ、ピリッと生姜の味。だけではなく、何故か幼なじみとよく行った、はまぐりまつりの記憶までもが一瞬で通り過ぎて行った。
海岸に耕運機で放流されたはまぐりを、大人達の間をすり抜け、夢中で拾い合っったあの思い出。
「…加奈子の奴元気かな?」
酔っ払うと不思議なもので、迷惑省みず人と話がしたくなるものだ。
しかしそれも今となっては叶わぬ事。家庭に入った幼なじみに用もなく電話をかける事は好ましくない。
重々承知している。
「あいつ、可愛いかったんだよなぁ…」
時雨の風味が通り過ぎた後、残ったものは淡き初恋の思い出だけだった。
やけに感傷的になってしまったのは酒のせいだと、自分に言い聞かせた夜。居間の電球だけがこうこうと部屋を照らしていた。
終
海岸に耕運機で放流されたはまぐりを、大人達の間をすり抜け、夢中で拾い合っったあの思い出。
「…加奈子の奴元気かな?」
酔っ払うと不思議なもので、迷惑省みず人と話がしたくなるものだ。
しかしそれも今となっては叶わぬ事。家庭に入った幼なじみに用もなく電話をかける事は好ましくない。
重々承知している。
「あいつ、可愛いかったんだよなぁ…」
時雨の風味が通り過ぎた後、残ったものは淡き初恋の思い出だけだった。
やけに感傷的になってしまったのは酒のせいだと、自分に言い聞かせた夜。居間の電球だけがこうこうと部屋を照らしていた。
終