七色マーブル【短編集】
「さ、車に乗って。」

シゲが助手席のドアを開けて待っててくれる。…なんでこんなに優しいんだろ?頭でも打ったんだろうか?

車は水温計が上昇した所でゆっくりと発進した。


「で、どこ行くの?」

「教えない。」

「何それ?」

「まーいっか。」

「…それは私のセリフだっ」


ご機嫌な3人組みテクノポップアイドルの曲をBGMに、車は夜を掻き進む。寝静まった市街地は信号の灯りだけが鮮やかだ。小1時間ほど経った所で車は止められた。


「降りるよ。これ持ってね」

「ん。」


手渡されたのは、小型の折りたたみイスと膝掛け。


「少し歩くよ」

「え、うん。ここって…港?」

「そう。」


シゲはずいずいと先へ進む。本当、どこに連れて行くつもりだ?


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