七色マーブル【短編集】
米を研ぎ、炊飯器のスイッチを入れる。圧力鍋に鳥の半身に葱、生姜、調味料をぶち込む。

夕飯の支度が一段落した所で、鞄から例の本を取り出しページを捲る。


「やっぱり何か入ってるよ…」


できれば見間違いであって欲しかったが…意を決して箱を開けた。

出てきた物はマイクロフィルムだった。


「ヤバいよ、映画みたいだどうしよ…」


葛藤の末、居間の電気に透かしながら虫メガネでフィルムを覗く。

息を飲む。


「…こ、これは?」


見知らぬ言語で書かれていて、まるで読めなかった。


ピィーッ!


「あわわっ」


圧力鍋の、圧力準備完了音だ。身体の力が抜け、へなへなと首がうなだれる。


「あー、バカくさっ。私何やってんだろ」


フィルムを服のポケットにしまい、火を消しにコンロに向かう。


「決めた。何も見なかった事にして明日本棚に戻しておこう。難しい話はもうおしまい。もうすぐ美味しい鳥飯ができるんだし、ビールでキュッと忘れちゃうんだからねっ」


言い聞かせる様に冷蔵庫を開けると、ビールが見当たらない。

一大事だ。


「…買いにいこ。」


上着を羽織りコンビニへ向かった。


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