七色マーブル【短編集】
「ありがとうございましたー。」

6缶パックを手に入れ店を出た。時計に目をやる。近道をしようと、少し薄暗い小路に入った時だった。


突然物凄い力で壁に抑えつけられ、手で口を覆われた。


「…静かにしろ、本をどこへやった?隠すと為にならないぞ」


背の高い男が高圧的なのに、ひどく落ち着いた声で私の目を射抜く。首筋に当てられたナイフが月明かりを受け、キラリと鋭く光った。

男は手をそっと私の口から離し回答を待つが、あまりに突然の出来事に恐怖と驚きで声が出ない。


「あああ…あの…」


やっと声を発した時だった。


「危ない!」


男が私に覆い被さる様にして地面に伏せた。


ーキュィン!


頭上を何かが掠めた。


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