七色マーブル【短編集】
カチャリ


錆び付いた鍵穴を回す音。

12時間ぶりの我が家。

玄関で靴を脱ぎ捨て、居間の入り口でダラリと崩れる。まるで脱ぎたての靴下の様に。


「…ちがれた」


あのカーチェイスの後、川に飛び込んだり、ヘリで知らない場所へ連れて行かれたり、顔のデカいランバンのスーツを着込んだ男に会わされたりと散々な目に遭った。


「…腹減った。」


炊飯ジャーに保温ランプが目に入った。


「…とり、鳥飯…」


丼に水分が飛んでパッサパサのご飯をよそい、ヨロヨロと台所にたどり着き圧力鍋の蓋を取る。


「のぉおおー!」


鍋の中にあったのは12時間圧力化の下に煮込み尽くされた、グズグズの鳥汁だった。


「怒チクショウ!私の鳥飯、ビールを返せえぇー…」


深いため息の後で鳥汁を温め直しご飯の上に注ぐ。


「…お茶漬けかよ」



文句タラタラに遠い目をしながら食べると、意外に旨かった。

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