七色マーブル【短編集】
その時だった。真後ろでほんの少しだけ金属音がした。

そして後頭部に押し付けられるもの。


…銃だ。


「…騒ぐんじゃねぇ、ここから出ろ。」

耳元で囁かれる低くドスの効いた声。


ゆっくりと立ち上がり、言われるがままに扉を開けて出た。


「…よし、そのまま右にまっすぐ、便所へ行けよ。」

「…お前、さっきの奴だな。」

「そうだ…、さっきは見事にやられたが俺はお前の行き先を知ってたんだよ。いつもあの席に座る事もな…。」

一見中の良い様に、横にピタリと並んで歩きながら会話をする。

奴のジャケットの内側にある物が、間違いなく俺に向けられている。

そうして懐を探られ、銃を奪われてしまった。
< 6 / 71 >

この作品をシェア

pagetop