七色マーブル【短編集】
「ありがとうございましたー」


お客がいない間に買い取った本をチェックし、専用のクリーナー液を染み込ませた布で、表紙の汚れを丁寧に拭き取る。

地下倉庫からどれを搬入するか、ボールペンをくるくると回しながら、在庫表とにらめっこ。

癒えぬ苛立ちを抱えつつも、日常の感覚を取り戻し始めたある日の午後。


「やぁ、こんにちは」


顔デカランバンスーツが、取り巻きを連れて店にやって来た。


「…何の用?」

「まぁまぁ、そうあからさまに嫌な顔をしなくても…今日は貴女にとっても良い話しを持って来たのですから、お気を悪くなさらずに。」


顔デカがニンマリと営業スマイルをかます。

やはり胡散臭い。


「ハァ?」


「単刀直入に言いますと、私は貴女の根性を気に入りましてね。こちらの店をウチの情報の受け渡し場所になって欲しいのです。」

「あ?」


…予感的中



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