七色マーブル【短編集】
車に乗り込み、キーを差し入れ回転させる。

乾いた始動音がきこえるとサイドブレーキを解除し、すぐさま発進した。




親父は苦労人だった。


早くに妻に先立たれ、俺達3人を必死に育て上げた。


仕事に誇りを持ち、絶え間ぬ愛情を注いでくれた。


元、国鉄職員。



遺体を発見したのは兄だった。


数日前に立ち寄った際の、忘れ物を取りに来て発見したという。


布団で眠る様に死んでいたそうだ。


誰にも迷惑をかけず、きちんと布団に収まったまま。



なんて親父らしい。



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