七色マーブル【短編集】
便所に入ってすぐ、奴は俺の眉間に向けて銃を向けた。

空間が奴の優越感で満たされる。

「…ふん、紅の虎と呼ばれたアンタがこんな終わりを迎えるなんてねぇ。最期に言い残す事があれば聞いてやるよ。」


冷や汗が伝う。何か手はないか?


「…すまないが、今何時だ?」

「21時58分だが?」

「…そうか、映画終わっちまうな。なぁ、女の元夫役の俳優の名前を教えてくれないか?思い出せないんだ。エンドロールで確認するつもりだったがこの通り…見れそうもない。」

「…ふん、つまんねぇ最期だな。」


最期の言葉としてはつまんねぇ事ぐらい分かってるさ。

…でも、今はこれが最善の言葉さ。お前には理解出来ないだろうがな。


「…頼むよ、スッキリしてから逝きたいんだ。」

「…いいだろう、教えてやろう。あいつの名前は…」


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