王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
♡0日目

・ロマンス小説の前夜






ウィルフレッド・ランスが死んだ。



その報せを受けて、瑛莉菜(えりな)は男の部屋へ乗り込むことを決めた。

むろん、事情聴取のためだ。



「うーん、そりゃ俺もまずいとは思ったけどさ。だってこいつ、あんまり言うこと聞かないし。嫌いなんだもん」


テーブルを挟んで瑛莉菜と向かい合う男は、骨張った手に似合わない乙女チックなイラストの描かれたチラシを折り、紙飛行機を作っていた。

反省する様子も危機感も、まるでない。


「嫌いなんだもん、じゃないですよ! そんな曖昧な理由でウィルを殺してどうするんです! ヒーローですよね!?」


瑛莉菜は音を立てて椅子から立ち上がると、男の手の中から折り目のついたチラシを乱暴に引っこ抜く。


「いいですか!」


そしてぐしゃぐしゃになったチラシを広げて、男の顔の前に突きつけた。


チラシには金髪碧眼の美少女が、これまた美形の騎士とみられる青年に抱き上げられる様子が描かれている。

来月アニメ化が決定しているヒストリカル・ロマンス小説の主人公たちだ。



題名は『結婚しナイト! 〜お姫さまの花婿さがし〜』。

大人女子向け恋愛小説レーベルであるミエル文庫で3年間にわたり人気を博し、ついにはレーベル初のアニメ化まで掴み取った全6巻に及ぶシリーズもの。
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