王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「両親は今ちょうど視察に出掛けていてね。まさかウェンディがお客様を招待するなんて思ってなかったから……母はたぶん、あなたをもてなせなくて悔しがると思うよ」
にこにこと嬉しそうなエドガーに案内されたのは、大きなシャンデリアが吊るされた広い部屋で、手前には夕食のための準備が整えられた細長いテーブルがある。
部屋の奥には立派な暖炉が備え付けられていて、そのまわりには高級そうなソファが暖炉を囲むように置かれている。
エドガーとエリナが部屋に入って来るのを認めると、ソファに座っていたはちみつ色の髪の少女が、緊張した面持ちで勢い良く立ち上がった。
ふたりが側までやってくるのを待って、翡翠色の大きな瞳を囲う長いまつ毛をふせ、侍女であるエリナに向かって礼儀正しいあいさつをする。
「ウェンディ・コールリッジと申します。昨夜はランス公爵と大変楽しくお話しさせていただいて、えっと、エリナさんにもわざわざ足を運んでいただいて、すみません」
「い、いえ、こちらこそお招きいただいて本当にありがとうございます」
エドガーはふたりが恐縮しきってペコペコと頭を下げ合うのを見ると、弾けるような笑い声を上げて両手でそれぞれの手を取り、テーブルへとエスコートした。