王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
翡翠色の瞳を向けられて、エリナの胸にせり上がるのは、感謝の想いと少しの驚きだった。
(なんて聡明な女の子なんだろう)
ウィルフレッドのことを、こんなふうに想ってくれる人がいるのだ。
容貌や爵位に惑わされがちな女性が多い中、ウェンディはまっすぐにウィルフレッドのことを見て、考えてくれているのだろう。
あのウィルフレッドでさえ苦手だというコールリッジ伯爵家だが、その家の令嬢こそ、彼の本当の姿を見極めようとしてくれているではないか。
エリナが様々な想いを込めて小さく微笑みながら頷くと、ウェンディもホッとしたように頬を緩める。
「神託の話を聞いたときは驚いたし、正直迷ったの……でも、いい機会なんだと思う」
一度部屋を出ていたエドガーが戻って来て、ウェンディがゆっくりと立ち上がる。
こちらへ向かってくるエドガーの両腕には古い飴色の壺が大事そうに抱えられていて、エリナは大きく脈打つ胸を押さえて立ち上がった。
ふたりがアーモンド型の瞳を見開くエリナの前に立つ。
ウェンディが握り合わせたエリナの両手を、そっと包み込んだ。
「禁断の青い果実の材料は、もともとバラバラであってはいけないのよ。誰かがひとつにまとめて、きちんと仕舞い込んでおくものだと思う」