王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
そのウィルフレッドが、彼の家に伝わるブルーローズを差し出して国を託そうとしているのがキットだというのなら、ただそれを信じてみたい。
ずっと仲違いしていた3つの家と王家が関係を修復することは、エドガーとウェンディの希望でもある。
その希望を、この機会にウィルフレッドに託してみるのも悪くないと思うのだ。
エリナは誇らしげな顔をする兄妹を見つめ、震える両腕ではちみつの入った壺をしっかりと抱きかかえ、ぎゅっと目を閉じた。
「本当に、何て言ったらいいか……。ありがとうございます」
膝を折って深々と頭を下げるエリナに、ふたりは少し照れくさそうな、満足気な笑顔で顔を見合わせる。
これはふたりで一晩話し合って決めたことなのだ。
偶然出会ったウィルフレッドから聞いた神託の件は、今後ふたりの理想を実現させるための第一歩になる。
これを機会に、いつかは全てがひとつになればいいと思う。
エドガーが爵位を継ぐのはもう少し先のことではあるが、この機会を逃せば、二度と禁断の青い果実の材料が再びひとところに集まるチャンスなどないかもしれない。
そしてこの賭けに出ることを決める条件は、今夜……。
「そのかわり……私と、これからもお友だちでいてくれる?」
ウェンディはエリナの腕を取り、顔を上げさせると、はにかんで"交換条件"を提案する。