王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
その様子を見て少し驚いたように目を見張るウェンディを促し、ウィルフレッドもふたりの後に続いた。
「なんだか仲が良いみたいなんだ、あのふたり」
ウィルフレッドが大げさに寂しそうな表情でため息をつくので、ウェンディは思わず頬を緩めて笑った。
* * *
ウィルフレッドがウェンディの訪問を知っていたのは、彼女の父であるコールリッジ伯爵から手紙が届いていたからだ。
あの舞踏会の夜に、ふたりが出会ったことを知ってすぐに出されたもののようで、今日の午後になって届いた。
エリナの訪問を歓迎したいが、妻と共に視察に出なくてはいけないこと。
そしてウェンディの話しぶりからして、彼女もすぐにそちらへ訪問することになるだろうという内容のものだった。
そのときは重々愛娘をよろしく頼むというようなことが、若干悔しさの滲み出る几帳面な筆跡で書かれていて、ウィルフレッドはつい苦笑してしまったほどだ。
コールリッジ伯爵がウィルフレッドを良く思っているとは考えにくいが、溺愛する娘がはじめて声を弾ませて舞踏会の報告をしてきたのだ。
その上"友だち"を招待したいとまで言われれば、泣く泣く許しを出すしかなかったのだろう。