王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「そしてもうひとつ届いた手紙が、これだよ」


この二日間にあった様々なことを話し、夕食も終えた席で、4人が囲むテーブルの上にウィルフレッドが一通の手紙を置いた。

差出人は、ランバート・ヴェッカーズ伯爵。

エリナは緊張に息を飲み、キットは不機嫌そうに眉根を寄せて差出人の名前を睨みつけた。


「まさかコールリッジ伯爵とヴェッカーズ伯爵から、それも同じ日に手紙をもらうなんてね」


ふたりにつられたように困惑顔になるウェンディのために琥珀色の瞳を茶目っ気を込めて揺らすと、手紙の内容を朗読しはじめる。


それはエリナとキットの予想通り、エリナをランバートの邸へ誘うもので、当然招待は彼女にのみ向けられていた。

ランバートの邸で穫れる13年に一度のラズベリーの収穫祭は3日後に迫っているが、その前夜からランバートの屋敷に滞在しないかという誘いだ。

前回収穫祭が行われた13年前、ウィルフレッドはまだ正式に公爵位を与えられる前だったために、参加していない。


こういった行事への女性の参加は男性の同伴が一般的であるが、エリナが望めばランバートがエスコートすると言っているし、不安ならウィルフレッドの参加も歓迎すると書いてあるが、おそらくその"歓迎"に前夜は含まれないのだろう。
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