王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「『約束した通り、私の望みに応えるならば貴女の望むものを差し出そう』……ってあるけど、まさかラズベリーのこと?」
文面を読み終えたウィルフレッドが訝しげに眉を上げて、手紙をひらりとテーブルの上に落とした。
エリナとキットに交互に視線を注ぎ、尋問するように腕を組んでいる。
エリナがランバートに目を付けられ、そこをキットが助けたということは話してあるが、その経緯や詳しい話はしていない。
ひらひらと舞い落ちた手紙がテーブルの上で静止するのを眉根を寄せて見届け、ふたりは同時に顔を上げた。
「行きます」
「行かせたくない」
ラズベリーをどのようにして得るか。
ウェンディからはちみつを譲ってもらった今、最後にして最大の課題はこれに尽きるのだが、この問題に関してエリナとキットの間では出会ったときから平行線なのだ。
お互い真逆の主張を声を揃えて伝え、ウィルフレッドがどちらの味方につくのかじっと見つめて待っている。
ウィルフレッドは瞳の奥に金色の輝きを燻らせながら考え込み、やがて諦めたようにため息をついた。
「ふたりの意見が割れてて安心した。キットがエリーを利用しようとしてるんだったら、ぶん殴ってやろうと思ってた」