王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「必死で、ねえ……」
ウィルフレッドはしばらくテーブルの上に放られた伯爵からの手紙をじっと見て考え込み、それからふっと顔を上げる。
そのときにはもう、瞳の奥で燻っていた妖しい金色の光は薄れ、いつもの穏やかな琥珀色に戻っていた。
「まあ、いい方法がないかもう少し考えよう。それより、今夜は快くはちみつを譲ってくれたウェンディにお礼をしないと」
ひたすら縮こまって3人を見守っていたウェンディは、突然話を向けられて慌てて首を振る。
「そんな、お礼なんていいんです! 私がこうしてお力添えすることができたのは、あの夜、偶然ウィルフレッドさまに出会って、たまたま神託のお話を聞いたからで……」
「うん。だから、舞踏会できみを見つけられてよかったなって。あのとき思った通りの素敵な女の子だ」
顔を覗き込むようにして言われ、ウェンディの頬にサッと赤味が指す。
仄かに甘い薔薇のような香りがするウィルフレッドに間近で見つめられ、ぽかんとするエリナとどこか呆れたようなキットの視線を感じると、ますます恥ずかしさで居た堪れなくなってくる。
ウィルフレッドはそんなウェンディに微笑み、彼女を立ち上がらせると、手を取るのとは反対側の手のひらを胸に当て、彼女をダンスに誘ったときのように低く囁きかけた。