王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「母方の家系には、古くから伝わる不思議な青い薔薇があってね。きみの家のはちみつと同じでなんだか特別なモノらしいんだけど、見ていきませんか?」
ウィルフレッドが口端を上げていたずらっぽく言うと、戸惑いに揺れていたウェンディの翡翠色の瞳が一気に好奇心の色に染まる。
ウィルフレッドはブルーローズのことを言っているのだ。
300年の間ボールドウィン伯爵家によって守り継がれてきたもので、特別な招待を受ければ、その青い薔薇が咲き誇る園を案内してもらえる者もいると聞く。
しかしはちみつを持つコールリッジ家の令嬢であるウェンディでは、生涯、ブルーローズを目にする許しなどもらえないと思っていたのだ。
「見たいです! ぜひ!」
興奮から勢い込んでついウィルフレッドの手をぎゅっと両手で強く握ってしまい、慌てて手を引っ込めようとしたが、それよりもはやく彼の手に捕らえられてしまう。
「それでは、案内致しましょう」
ウィルフレッドはなんだかすごく楽しそうに笑っていて、子どもっぽい反応をしてしまったかと恥ずかしくなったが、彼に薔薇園を案内してもらえることが嬉しくて、ウェンディははにかみながら頷いた。