王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
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エリナの自室は、コの字型になっている屋敷の底辺に当たる棟にある。
屋敷の中庭に面した窓側が長い廊下になっていて、そこに連なる部屋のうちの一室だ。
母親のステイシーがもともとボールドウィン伯爵家の侍女であり、ウィルフレッドの母と共にランス家へやってきてよく尽くしたことも重なり、エリナに与えられた部屋は屋敷の中でも眺めのいいところだった。
今夜のように澄み渡った夜には、バルコニーに出れば明るい月の光に包まれる。
寝間着に着替えたエリナは、はちみつとブルーローズの入った小瓶を持って、裸足のままバルコニーに出た。
ランス家の侍女服は仕立てのしっかりしたもので、使用人に支給される服と比べれば高価なものではあるが、一般的なご令嬢たちが夜会で着るドレスのように窮屈なものではない。
こうやって薄着をすると開放感があったし、膝下が無防備に空気に触れるのも魅力的で、本来の自分に戻れる大切な時間だった。
とは言っても、エリナの寝間着は一枚一枚は肌の透けるような薄いレースを幾重にも重ねたもので、形はシンプルだが、彼女がついつい部屋着にしてしまう緩いTシャツなどとは使われている布の多さも桁違いだろう。