王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
だけど小さく震えながらも抱き付いてくるエリナを放っておくのも嫌だったので、キットは一度大きく息を吸って理性のしっぽをしっかりと握ると、片方の腕でエリナの細い身体をぎゅっと抱きしめた。
そうするとしがみ付いてくる身体から少し緊張が抜けたようで、そのまま無防備に身体を預けられるとますます身悶えしたくなる。
それでもキットは片腕でエリナをしっかり抱きかかえて、彼女の肩口に顔を寄せた。
夜風がふたりの熱をはらんでどこかへ運んでいく。
並んで置かれた小瓶は、その中にたっぷりと月の光を含んでいる。
だいぶ落ち着いてきたキットは、抱きしめる手でエリナの背中に流れる柔らかな髪をそっとなでた。
エリナが顔を上げようとしないのをいいことに、頭のてっぺんに黙ってキスを落とす。
不意打ちの行動には驚いたが、エリナにこんなふうに甘えられて悪い気はしなかった。
(だけどこんなとこウィルに見つかったら殴られるだけじゃ済まねーな)
キットは頭の隅でそう思ったが、今更エリナを離す気にもなれない。
彼女を抱きしめながらも片方の手を手すりに付いたままなのは保険であって、いくらエリナの寝間着が触り心地のいい薄いレース生地であっても、片手では破けないと思ったからだった。