王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「俺も収穫祭には参加するし、なんとかラズベリーを手に入れられないか考えてみるけど……」
ウィルフレッドは言葉を濁して、少し困ったような顔をした。
彼がランバートからラズベリーを譲ってもらうのは、それこそ盗み出して来ない限り難しいことだと思うので、エリナもウィルフレッドの意を汲んでコクリと頷く。
つまり収穫祭の夜、ラズベリーを得るために動ける戦力は、エリナとキットと国王が送り込む使者たちといったところだろう。
「ヴェッカーズ伯爵は自分がしてもいいとか言ってたけど、収穫祭でのエスコートはキットに任せるよ。と言うか、あいつがエリーを渡さないと思うしね。俺にも伯爵にも」
「そっ、そんなこと……」
ウィルフレッドにからかうように言われて、カッと頬が熱くなる。
昨夜のことは知られていないはずなのに、自分から彼に抱き付いてしまったことや、あの後随分と長い間抱き合っていたことなどを含めて揶揄されたみたいで、やけに居心地が悪い。
「王子様にエスコートされるのはいろいろと大変だと思うけど……もし、本当に嫌なことがあったら俺のところにおいで」
琥珀色の瞳を緩めて優しく微笑んだウィルフレッドは、まだ初めての感情に戸惑う妹の髪をそっとなでてやった。