王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
昨夜自分が言ったこともしたことも、彼に言われたこともされたことも、どれを取っても恥ずかしくて、顔を合わせたくない要素にしかならない。
これまで恋人は人並みにいたし、恋人同士が行き着くところは大抵経験してきたエリナだが、初恋が遅くしかも実らなかっただけに、こういったことの方がむしろ耐性がなくて困ってしまうのだった。
エリナは熱をもった頬を冷やすために数秒間自分の指先をあて、だけどやはり自分にはキットを起こす責任があると思い定めて、客間のドアに手をかけた。
キョロキョロと辺りを見回して人目がないことを確認すると、一気にドアを押し開ける。
部屋の前で随分とぐずぐずしてしまった。
とにかくはやくキットを叩き起こさなくてはと、エリナは勢い良く部屋に飛び込んだ。
バタンと音をたててドアを閉めると、静かな部屋の中に音がこだまして消える。
客間は当然エリナの自室より広く、ソファやテーブルが整然と置かれていて、今の時期には使わない暖炉にもきっちりと手入れが行き届いていた。
エリナは部屋の中をずんずん横切り、続き間にあるベッドを目指した。
広い部屋の中央に堂々と鎮座するベッドの上には、白いシーツが膨らんで饅頭のようになっていて、呼吸に合わせて静かに上下しているのが見て取れた。