王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「もう! 起きてるならちゃんと最初か……らっ!」
シーツの下から素早く伸びてきた手のひらに手首を掴まれ、文句を言おうとしたエリナはベッドの上に引き上げられた。
慌てて手を付き、膝で踏ん張ってキットの上に倒れ込まないように堪える。
「なっ、なにして……!」
「エリナこそ、何でそんなによそよそしいわけ? 昨日はあんなに可愛く甘えてきただろ」
「そっ……!」
そんなことないと言い返したいところだが、舌が空回って上手く言葉がでてこない。
(あっ、あれが甘えたってこと……!?)
恋愛には淡白なほうだと思っていたし、あまりのめり込むこともなく、昨夜のように自分から抱き付くことなんて数える程しかなかったかもしれない。
何より、抱き合えばキスがはじまり、そのまま肌を重ねるような恋愛しかしてこなかったのだ。
あんなふうにただ抱きしめてもらった経験なんて、あっただろうか。
エリナの中では"甘える"の定義は、物を強請ったりわがままを聞いてもらったりすることであって、あれが甘えることだと自覚はなかったが、言われてみればそうだったような気もして余計に混乱する。
「とっ、とにかく! ちゃんと起きてくだ……きゃっ!」