王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
見上げてくる青紫色の瞳に心臓が破裂しそうで、なんとか身体を起こそうとするが、侍女服の長いスカートとシーツが絡まって上手く起き上がれない。
それどころか、キットの手がさり気なく腰に回され、腕を引かれて身体がくるんと反転した。
ベッドの上に転がされて目を丸くするエリナを、キットが上から見下ろして、逃げられないように彼女の両脇に腕を付いて閉じ込める。
「もしかして、ウィルのことも毎朝こうやって起こしてやってる?」
「ウィルフレッドさまは毎朝ご自分でお目覚めになります!」
「ふーん、もったいないやつ」
キットはくすくすと喉の奥で楽しそうに笑って、上機嫌に肩を揺らした。
こうして閉じ込められては、どうせ抵抗しても逃がしてもらえない。
エリナは唇を尖らせてそっぽを向き、なるべくキットを視界に入れないようにした。
この体勢はちょっと、朝から心臓に悪い。
「着替えは手伝ってくれねーの?」
「執事が手伝います」
「今ここで脱いでもいい?」
「変態っ! ダメですから! 絶対ダメ!」
危険な発言につい身体を囲う腕をペシッと叩くと、エリナを見下ろしていたキットの身体が笑いながら離れていく。