王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
馴染みの仕立て屋にそう告げて、脱いだドレスを渡し、明日の朝もう一度届けてもらうようにお願いする。
仕立て屋はものすごくホッとした顔で礼を言い、アメリアは拗ねたようなキットの顔を見て何か勘付いたのか、終始ニヤニヤしていた。
そして荷造りもいよいよ大詰めというとき、部屋に突然ウィルフレッドが飛び込んで来た。
「エリー!」
切羽詰まった顔をしたウィルフレッドは、部屋の中にエリナの姿を認めると、彼女の元へすっ飛んで行く。
普段はエリナのことを妹のように可愛がるウィルフレッドだが、この時ばかりは混乱して、子どもが母親に縋り付くかのようで顔面蒼白だった。
「ウェンディがいなくなったんだ。使用人たちは俺が彼女に帰るよう言ったから馬車で送り出したと言ってるけど、俺はそんなこと言ってない!」
「ええ!?」
ウィルフレッドはなるべく自分を抑えようとしているが、早口になり声の大きさもどんどん大きくなっていく。
あのウィルフレッドが不安を隠しきれないほどに只事ではない様子に、エリナも驚きの声を上げた。
「何がどうなってるのか……もし誰かが意図して彼女を連れ出したのだとしたら……。とにかく俺、馬を走らせて探してみるから後のことは……」