王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「ウィル、わるかった。俺のために、ガーランド王家の勝手に付き合って、婚約話を受けてくれてありがとう」


突然そう切り出され、ウィルフレッドは困惑して眉を寄せた。


キットの言っていることは、さっきからめちゃくちゃだ。

ウィルフレッドはランス公爵という爵位をもっているのであって、貴族である以上、何らかの政略結婚になるのは当然だった。

それが王家のためであり、王太子の命に関わることであるなら、任されたことはとんでもない名誉であるし、キットのためならば一も二もなく引き受ける。


しかも禁断の果実の完成前に全てをウェンディに暴露したりして、本当に困るのはキットの方だ。


ウェンディがはちみつを譲ったままにしてくれたから良いものの、返せと言われたらどうするつもりだったのか。

キットが規格外の王子なのはわかっているつもりだったが、説教したり謝ったり礼を言ったり、ウィルフレッドをしてもわけがわからない。


「だけどお前には、ちゃんと一緒に生きていける相手と幸せになってもらわなきゃ困るんだよ。エリナのことは俺に任せて、そろそろ本腰入れろよアホ」


キットが、何かどうしようもないほど大切なものを見つめるように小さく笑う。

エリナにはこの部屋にいる誰よりも先にキットの言いたいことがわかって、ホッと胸を撫で下ろした。
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