王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

ランバートはエリナが膝を折るのを満足そうに見やり、褐色の目を細める。

その瞳の色とダークブラウンの髪こそ違うものの、はっきりとした目鼻立ちや大きめだが高く綺麗な鼻梁と厚めの唇は、エリナの初恋の相手にそっくりだ。


「紹介しましょう。私の義妹のアリスです」


ランバートがそう言うと、彼の隣に控えていた赤毛の女性がスッと前へ出て膝を折る。


「お目にかかれて光栄です、王太子殿下」


ランバートの義理の妹だというその女性は、緩い巻き髪の赤毛にブラウンの瞳をしていて、人形のように愛らしいウェンディに比べれば地味だが、とても理知的な顔立ちをしている。

アリスは簡単な言葉でキットへのあいさつを済ませたが、エリナのほうには目もくれない。


エリナの本来の立場は公爵家の一介の侍女であるが、今夜はランバートの招待客であり、しかも同伴は王太子である。

アリスの態度は不敬にあたると言えなくもないが、もともと王家とヴェッカーズ伯爵家の関係も微妙な問題であるため、何とも言えないところだった。


「アリスとは歳が離れておりますから、義妹というか義娘というか、そのようなところです。さあ、屋敷の方へどうぞ。少し休んだら夕食にしましょう」
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