王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ランバートに促されて屋敷へ入ると、客間に案内されてひとまず荷物が運び込まれる。
明日の収穫祭でのドレスなども持って来てあるから、意外に大荷物だ。
キットとは途中で別れて別の部屋へ案内されたため、彼がどの辺りにいるのかはわからなかった。
(まあ、当然といえば当然か)
はっきり言えばキットは王太子という立場を使って無理やりついてきたわけで、夫婦でもなんでもない男女が同じ客間に入れられるというのも考えられない話ではあった。
エリナが食堂へ足を運ぶと、すでに他の3人は集まっていて、夕食の準備も整っている頃だった。
ランバートとキットは部屋へ入ってきたエリナの方へ目をやったが、アリスは何の反応も示さない。
歓迎されたいとは思っていなかったが、ここまで無視されるとも思っていなかった。
招待されたのはこっちなのに。
エリナとアリスが、ランス公爵家の乳兄妹とヴェッカーズ伯爵家の義妹と考えれば、仕方のないことなのだろうか。
エリナが席につくと次々と料理が運ばれてきて、奇妙なほど穏やかな晩餐がはじまった。
ほとんどの会話はランバートとキットの間でなされ、腹の探り合いのような当たり障りのない話題が選ばれる。
ランバートがエリナに話を振ってもすぐにキットが答えを言ってしまうので、キットは自分にしゃべらせる気もないのかと半ば呆れ、美味しい料理を味わうことに専念することにした。